心地いい匂い


『遼』ちょい甘




「春だなぁ。」


珠紀は、成り行きで、学校をさぼってしまっていた。

遼っぽい人影が、学校とは別方向の、山へ向かう道にいたような気がして、呼び止めようと追い掛けるうちに、見失い、気がつくと、どう頑張っても遅刻する時間だった。

だからといって、やって良いことではないが、迷った結果…

「たまには…のんびりしちゃおう…」

という事になったのだ。

今は、祐一から借りた本を読んでいたのだが…日差しはポカポカ暖かいし、桜の花は正に満開で…いくら文字を追っても、全然頭に入らなかった。

珠紀は諦めて本を膝の上で閉じる。

足を投げ出して座り、木にもたれていると、桜の花びらがひらひらと身体に舞降りてくる。

その光景は、夢のように綺麗で、なんだかすごく心が安らいだ。

「ふはぁ…」

花びらを目で追う内に、珠紀は、眠りに落ちてしまった。

どのくらい眠ったのか。

珠紀は、少し意識を浮上させた。

「ん……。」


温かい。

日のあたたかさ、とは違う温もりが、珠紀を包んでいる。

(………遼?)

珠紀には、遼の制服がかけてあった。


まだ、まどろんだままの瞳で、隣に寄り添う遼に視線を送る。

遼はどこか遠くを見ているように見えた。

グレーの髪が、木漏れ日に透けて、銀色に光る。



「…起きたのか?」

視線に気づいた遼が珠紀の方を向く。

呼吸を感じる程、間近に顔がある。
珠紀は小さく頷いた。

「お前、無防備すぎ。こんなとこで…。なにかあったら、どうするんだ。」

珠紀は、寝起きのフワフワした表情のまま、口をひらく。

「…大丈夫だよ…私が何処にいても、遼にはわかるでしょ…。遼が守ってくれるもん…。」

そして、とさっと頭を遼の胸に預ける。

「遼…好き…」

「!…」

珠紀の体から、力が抜けて、また、スースーと規則的な寝息が聞こえてきた。

遼の腕の中に、すっぽり収まる珠紀の体からは、いいにおいがして、遼を刺激する。
けれど、信頼しきった珠紀の寝顔に、さすがの遼も、なにも出来ない。

「…ずるいぞ。…おい。」

呟いてみても、珠紀は安らかな顔で眠るばかり。

「…いつもそう言ってくれるなら、俺だって……無理矢理したりしないんだ…」

遼は珠紀を優しく抱きしめた。


「…りょぉ〜…」

珠紀は寝たまま、満足そうな笑顔を返す。

「…ったく。」

遼は、ぶつぶつ言いながらも、満更でもなさそうに微笑んで目を閉じた。

桜の花の匂い

春独特の土の匂い

日向の暖かい匂い

愛しい珠紀の匂い

「…たまには、こうゆうの…悪くない…か」

心地いいと思う匂いに包まれて、遼もいつしか眠りに落ちて行った。


緋色の欠片18禁
LOVE DREAM
緋色の欠片裏夢

kiss to
珠×真 微甘裏

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